今年もGame Developers Conference 2018が開催されています。
例年通りEpic Gamesの基調講演「State of Unreal」が行われました。
どのような内容があったのか振り返ってみましょう。
基調講演全体は以下から確認することができますので、全部が知りたい方は直接どうぞ。
モバイルゲームの立ち位置が飛躍的に上昇
昨年からモバイルゲームの勢いが増してきており、リネージュ2 エヴォリューションからのハイエンド指向は更に強くなってきています。
これまでのモバイルゲームと違うのは、ほぼフル要素のゲームがモバイルでも受け入れられつつあるということです。
実際にモバイル版のフォートナイトやPUBGはほぼそのままのゲームプレイがモバイルへと移植されていますが、世界中でプレイされています。
リリース間もないモバイル版フォートナイトとPUBGが世界中でトップセールスに。
フォートナイトは先にリリースされていたPUBGを完全に追い抜く勢いで、世界はもちろん、日本国内でも素晴らしいセールスとなっているようです。
そしてフォートナイトがリリースされることによって、UE4自体にも素晴しい機能や最適化が追加されています。
これらの最適化によって、UE4を使うだけで開発者はその恩恵を受けられるようになっています。
UE4.19でも多くの機能改善や処理負荷改善が入りました。
私も最近モバイルやコンソールゲームの開発をしているので、これらの恩恵を非常に受けています。このフォートナイトの最適化に関する話は別の講演で色々とその内容を聴くことができます。
パラゴンのアセットのフリー化
今年の4月にクローズが決定してしまったMOBAゲームのパラゴンのアセットがキャラクターモデル、アニメーション、テクスチャー、エフェクト、サウンドまで含めたものがフリー化されました。
パラゴンのアセットには約$12,000,000(約12億円)ほどの制作費がかかっており、これらが一気にフリー化されるというのは衝撃的でした。
この発表はGDCの開催直後に流れてきたので、多くの人が最初の驚くことになる最初のニュースでした。
また今年の春から夏にかけて、まだ配信されていない残りのヒーローキャラクターのアセットも順次追加されるとのこと。
最終的には全て配信されそうなのでぜひパラゴンのアセットの中身を覗いてみましょう!
昨年以上に映像事例が増加
昨年も映像事例が多くありましたが、今年は更に増えて大手だけではなく、中小スタジオでも使われるようになりました。
Digital Dimension社が制作したZAFARIは長尺のテレビアニメシリーズとしてUE4が活用され話題となりました。
またZAFARI以外にも中小規模のアニメーションスタジオでUE4が使われており、アセットはマーケットプレイスも活用することで比較的低コストに制作できたとか。
現在のマーケットプレイスには実に様々なアセットが並んでおり、しっかりと活用することで必要以上にコストを掛けなくてもハイクオリティな映像を作り出すことが可能です。
この使い方が上手いスタジオは少人数でも大規模なものが作れているということらしいです。
デジタルヒューマンによる現実の非現実化
新しく発表された映像デモとして、デジタルヒューマンと呼ばれる現実のような人間を非現実に作り出すことが行われています。
Epic Games協力のもと、中国のTencentとモーションキャプチャーデバイスのViconや映像を作る3Lateral、Cubic Motionといった企業が協業して、リアルタイムのパフォーマンスキャプチャーでデジタルの人間を現実の人間と同調して動かすことが出来ています。
これまでにもCGで現実のようなキャラクターがプリレンダーで制作されていたものは多くありましたが、リアルタイムでかつパフォーマンスキャプチャーされたものがここまで動いているのは驚きです。
そしてデジタルヒューマンはこれだけではありません。
映像監督兼俳優のアンディ・サーキスさんが自身をデジタルヒューマン化をした映像が公開され、こちらはパフォーマンスキャプチャーされたものではありませんが、十分すぎるほどの表情と演技力があります。
そしてこれらのデータを応用し、そのまま別キャラクターへと転用することまで可能となっています。これはすごい…つまり完全に別キャラクターを本人の表情そのままで演じることができるのです。ある意味でバーチャルYouTuberの究極系なのかもしれません。
AR、MR技術の革新的向上
昨今ではARやMRといった現実空間にCGのキャラクターを登場させる技術が再注目されており、こちらも大きく技術発展しています。
昨年のリーグオブレジェンズの世界大会での生放送中にCGによるドラゴンが登場したそうで話題になっていたそうです。こちらのドラゴンがなんとUE4でレンダリングされたものでした。
すごい…現実世界にドラゴンが降りてる…しかもちゃんと影まで落ちてる…これがリアルタイムで出来るのか。 #UE4 #GDC18j pic.twitter.com/0HItzDfO6q
— alwei (@aizen76) 2018年3月21日
これはまた凄い…これまでのARには必須だったマーカーのような情報もないのにも拘わらず、地形の情報を取得し、影を落とし、遮蔽物の向こうに移動しています。これらの技術がどこまでがUE4によるものかはわかりませんが、これほどのものが出来ているのであれば、本当に拡張現実の世界で狩りを行うゲームが今後発売されるのかもしれません。
何にせよ今後の発展には更に注目です。
リアルタイムレイトレーシングによる表現力の大幅向上
マイクロソフトが新たに発表した『DirectX Raytracing』とNVIDIAの『NVIDIA RTX Technology』により、ついにリアルタイムによるレイトレーシングが可能となる時代に。レイトレーシングはV-RayやArnoldといった映画などの映像向けのレンダラーソフトで使われているいわゆるプリレンダリング用の技術です。
これがリアルタイムで動くというのはどういうことなのか…
目を疑いますが、これがリアルタイムで動く映像だそうです。
本来ゲームエンジンはこういった光沢を持つ反射物を環境マップといったスクリーンベースの擬似的なリフレクションで軽量な反射を実現していましたが、そこをあえてレイトレーシングによって正確な反射を計算することで、ここまでの映像が出来てしまうということです。
ただし、現状のリアルタイムレイトレーシングはまだまだ重たいもので、Volta世代のGPU(まだ家庭用のGPUは販売していない)でしか動作しません。
これが数年以内にコンシューマー向けのGPUで実現すれば、大幅に映像制作コストを削減することが可能となり、映画のような作品もUE4やゲームエンジンで作られるようになるかもしれません。
正直に言って、私はリアルタイムのレイトレーシングなんて、まだまだ無理だろと思っていたクチなので、今回の映像には本当に驚きました…
存在感を増すUE4製ゲーム
更にUE4のゲームはどんどん増えており、存在感を増しているものがとても増えました。
2017年はSteamでUE4製ゲームが売り上げた額が$1ビリオン(約1兆円)に達したそうです。
特に昨年はPLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(通称PUBG)が非常に盛り上がり、Steamでもこれだけは買ったという人も多いはずです。PUBGの他にはロケットリーグなども盛り上がり、今でも非常に勢いがあります。
そして次に取り上げられたのが『Concrete Genie』という、描いたものが何でも動きだすというアクションアドベンチャーゲームが取り上げられました。
非常に独創的でUE4の先進的な機能を多く使っており、ビジュアルだけではなく物語やゲーム内容そのものにも大きく期待がかかる作品です。個人的に凄く興味が出てきました。
そしてここで既にサバイバルアクションゲームとして既に大ヒットしている、『ARK:Survival Evolved』のニンテンドースイッチ版が発表されました。
ARKは日本でもかなりヒットしており、ニンテンドースイッチ版が発売されることで更にユーザーが増える可能性があります。またARKは既にスマートフォン用のモバイル版も発表しており、こちらも話題になっております。
フォートナイトで実装される新リプレイシステム
最後に現在もYouTuberに大人気の実況ゲームともなっているフォートナイトですが、そういった人達を更に盛り上げるべく、UE4に新しいリプレイシステムが追加されます。
新しいリプレイシステムは、自由にカメラを弄れるだけではなく、特定キャラへのフォーカスやドローンアタッチカメラ、カメラの自動露光、絞り具合、フォーカス設定、などが全てゲームパッドを介して簡単に設定することができます。
これにより、ゲーム実況者や映像制作者はより面白い映像を作ったり、これまでと違う視点での動画を簡単に作ることが可能となります。これらの機能はゲーム制作者よりも、ゲームを遊ぶゲーマーやそれらの実況を楽しむ人達のために追加されるようで、昨今のゲーム実況人気を反映したものとなっています。
UE4本体には4.20からこのリプレイシステムが実装されるとのこと。
ゲーム、映像、その他あらゆる分野で認知度が上がるUE4
今回の基調講演を観ていて、Epic Gamesはゲームはもちろん、映像の分野やその他多くの場所でトップを取りにいこうとしているのがわかります。
Epic Gamesは現在フォートナイトがゲームとして世界的な大ヒットを飛ばしており、エンジンビジネスがなくてももはや成り立つレベルとなっていますが、エンジン自体も今後より一層強化することで、ゲーム開発者はもちろん、ゲームをプレイするゲーマーも含めてサポートをより深めて、ゲーム実況者を観ることで潜在的なゲーマーも増やし、あらゆる層を巻き込んでいることがわかります。
今後どの方向で進化していくのか全く予想がつきませんが、今後もUE4とEpic Gamesからは全く目が離せません。フォートナイトも楽しいよ!